絶叫
平井容子


ふるい夢をみた
ふゆの朝

たまごが2個の目玉焼きは
血が混じったために
スクランブルエッグになった

またつくればいいさとあなたはいう
ギンガムチェックのテーブルクロスに
あたらしい
シミを見つける

スーパーの帰り
重い自転車のかごをみだりに振って立ってこぐ
とおくへ、とおくへ
西日に染まる鉛色の雲
手ぶくろを忘れた指がぎしぎしともだえる
とつじょ、つんざく警報
分断されるあちらとこちら
ふるい夢をみた
ーーーほら、みてごらん、つぎは特急だよ
特急は止まらないのよ
ずっととおくまで行くのよーーー

吐き気

おかあさん
おかあさん
まだうまれないものの名を呼べないかわりに
あなたを呼んだわたしがいた

はりさけた傷から声が吹きでても
轟音とともにすべてつれてゆかれ
いつもどこにも着かないとしたら
わたしはもうあなたにはなれない





自由詩 絶叫 Copyright 平井容子 2024-12-16 01:41:01
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