絶叫
平井容子
ふるい夢をみた
ふゆの朝
たまごが2個の目玉焼きは
血が混じったために
スクランブルエッグになった
またつくればいいさとあなたはいう
ギンガムチェックのテーブルクロスに
あたらしい
シミを見つける
スーパーの帰り
重い自転車のかごをみだりに振って立ってこぐ
とおくへ、とおくへ
西日に染まる鉛色の雲
手ぶくろを忘れた指がぎしぎしともだえる
とつじょ、つんざく警報
分断されるあちらとこちら
ふるい夢をみた
ーーーほら、みてごらん、つぎは特急だよ
特急は止まらないのよ
ずっととおくまで行くのよーーー
吐き気
おかあさん
おかあさん
まだうまれないものの名を呼べないかわりに
あなたを呼んだわたしがいた
はりさけた傷から声が吹きでても
轟音とともにすべてつれてゆかれ
いつもどこにも着かないとしたら
わたしはもうあなたにはなれない