羊たちの叫び
鏡文志

ある朝オギャーと生まれた赤ん坊は、おっぱいに抱きつきまちた。
「あー、これはおいちい。これは僕を苦しみから救ってくれるものた」
そう思った赤ん坊は何度もそのおっぱいをスイスイしました。
「坊や、私の言うことをなんでも聞くのよ。そうすれば貴方を考えなくさせてあげるから」
「分かったあ」
赤ん坊がテレビを見ると、タレントが喋っています。
それを見ると、お母さんと違うことを言っております。
「お母さん、テレビに出てる人が、お母さんと違うことを言ってるよーん?」
それを聞いたお母さんは大慌てで、テレビを消し
「私の言うことを聞きなさい。そうすれば貴方を考えなくさせてあげるから」
少年は大人になり、矛盾だらけの世界を生き延びました。
時々考えそうになると、テレビを眺めアイスクリームを舐めて、精神科医に相談し、ラジオをつけて、音楽を聴き、学校に行って先生の言ったことを思い出し、言われていることを聞けばいいんだと思い、それを信じてはいけないと言った人の話を思い出し、とにかく明るく真面目に生きていけばいいんだと規則正しさと礼儀正しさ、健康的で文化的な最低限度の生活を送り、時々おかしいと思うとネットの陰謀論を見て笑っている。
「僕を考えなくさせて欲しい、僕を考えなくさせて欲しい。そうすれば貴方の言うことをなんでも聞きます。精一杯リスペクトします。先生と崇めます。師匠と崇めます。下のものには容赦なく振る舞います。もし、一ミリでも僕に考えでもさせる人間を見つけたなら、容赦なく命を奪います」
「私を考えなくさせて、私を考えなくさせて。そうすれば貴方に大切なものをなんでもあげるから。そして生まれてくる赤ん坊に教えることも、私にはこの世で学んだ考えなくさせるアイデアでいっぱいよ」
世の中は羊たちにおっぱいを与える母親と、飼育上手な父親でいっぱいです。同志なく、仲間と友達でいっぱいの国で羊たちが輪を描きながら、考えないためのアイデアを今日も毎日共有し続けておりましたとさ。


自由詩 羊たちの叫び Copyright 鏡文志 2024-12-11 06:53:47
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