絶景に志す
トビラ
モアイ像の横に座って
夕焼けを浴びている
君、なんか角っとしてるね
顎もけっこうしゃくれてるし
そういうの、ちょっと思ってしまう
辛いことたくさんあったのかなって
ごめんね、勝手に
吉田とさ、この前カラオケに行って
一緒に怪獣の花歌を歌った
吉田がさ、なんかこれすごい流行っててって
歌うとすごいきもちよくなれるんだって
サビのところで声が裏返ってもかまわずに
一緒に歌ったんだ
私たちに必要だったのは、
そういうバカさだったのかもしれない
幸せを、豊かさを、平和を、安らぎを、
ただただ願っていたはずなのに
気がついた時には、
もう全てが手遅れになっていて
途絶えた歴史の一部になっていた
こんなところで何をしているんだ?
貴方はまだ現在進行の人だろう
アーティファクトの影に隠れてどうする?
貴方という可能性を現在に叩きつけたらどうだ?
命ある人よ
その炎のゆらぎで立ち上がったらどうだ?
きびしいね、いや、やさしいのか
泥濘はダメだなんて甘えか
甘さ?、弱さ?、けっこうじゃないか
生きている証だ
今を生きる人よ
理屈をこねるより
自らを直視しなさい
貴方という可能性を認めなさい
貴方の生を信じなさい
内在する神性を現しなさい
できるかな?
私たちにはできなかった
でも貴方は今を生きている
そこにある選択は、
するか、しないか、だよ
やっぱり、きびしいね
うん、でも、やさしい
モアイ像の横に花一輪
生きたいと願い春に立つ