母の話 2
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あなたを愛していると私が言う時
そこには
多分に色々な物事が含まれ過ぎていて
そしてその虚無のキャパシティのようなものを生んだのが
母だ
母がそうなる以前から
私には妙なセンスがあった
後天的なものなのか先天的なものなのかは知らない
ただ
人を信じないのだ
信じられないのか、信じたくないのか、信じようともしないのか
色々な言い方はある
でも
それはごく自然なことで
生きる分にはそっちの方が優れていると言ってもいいのかもしれない
風の音を聞くこと
光を見ること
普通の人は皆そうやって生きていると思っている
でも
本当はそれは人を介して人と共に初めて出来ることで
私は恐ろしく早くにそれを放棄してしまった
させたのは神と呼ばれる時の流れかもしれないが
したのは私だ
責任を取るのも私だ
神を責めても仕方がない
愛している、鳥達は私を見てかわいそうな飼い鳥のことを思い出す
歌をうたってくれる私のことを
鳥達にとって愛は歌
決して自分の名前さえ呼ぶことができなかったかわいそうな私の小鳥
嘘を吐かなければよかった
"私なんていなければよかった"
愛そうとしているわけではないし
憎んでいるのに疲れたことも確かだ
だからといって私みたいなくずに
簡単にほだされちゃうようなひとを
(あるいは)
放っておくわけにもいかない気がして
あの子みたいに死んでしまう気がして
それは比喩的な意味ではなくて
本当に彼らは嘘を吐かれただけで死んでしまう
何故、何を自分が探しているのか、全く分からなくなるのだ
そしてその唯一の手掛かりである自分が
消えてしまうことについて
責任を感じていない訳ではない
責任を取れるぐらいには大人になりたい
私を捨てた人々にも同じことがいえる
彼らもまた
本当は最後まで自分に向き合わなければいけなかった
母は私を怒鳴り付け続けた
毎日毎晩
朝となく夜となく
何一つ口答えをしない私を
理由さえないのに
私が怒らなければならないのも
お前のせいだと言って
母はとうにそれを忘れている
そして私の友達も同じことをしてくれた
自分がした悪いことを
水に流そうぜと言って笑うのだ
付き合うつもりがなくなって良かった
本当に良かった
そして母になった
私はあの子の子供の父になるべきだっただろうか
というかそうなのだろうか
あなたを愛していると言う時
そこには多分に揶揄が含まれていて
だから面白がって
あなたもそれを否定しないのだろう
人を撒いてまで二人になりたがったのは悪かったと思っている
ご挨拶に現れたのも不可抗力とはいえ申し訳なかった
メモはいつか返す
でも私に本気になる必要はないのだ
みんなルールなど守らない
守り続けている私は
ただの馬鹿だ
そして神は馬鹿をも愛してくれる
愛してる