【病棟日誌】 冬のはじまり
レタス

空の青がとても悲しくて
黄色い銀杏の葉が飛ぶ時を待っている
中庭に降り注ぐ陽射しは眩しくて
まなこを閉じて五体を開き暖をとる
ときおり吹く風は透明な北の便りを運んできた

午後三時のチャイムが鳴ったので
急いで見えない手紙をかき集め
病棟裏の焼却炉に突っ込み
新聞紙とともにライターで火を点けた
振り返ると手紙はますます多く散り敷き
一人ではどうにも手がつけられなかった

中庭に戻ると一際強い風が吹き
銀杏の葉が渦を巻きながら
パラパラと遠く南の空に旅立った

世間はもうじきせわしく動き
やがて今年にピリオドを着けようと
カレンダーとにらめっこをする
ぼくはカレンダーを持っていないので
戸惑いながらゆっくりと息を吐き
食事のメニュー表で時を知る

今夜は肉じゃが、ブロッコリーのカニかま和え、
小女子の佃煮、ワカメご飯だった


自由詩 【病棟日誌】 冬のはじまり Copyright レタス 2024-12-02 21:08:58
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