和菓子ネットワーク
天使るび(静けさが恋しい)
いちご大福のピリッとした風味にいつでも小さな衝撃を受ける。砕かれた果肉の柔らかさと異物感はごわごわの衣服を水浸しにするように目まぐるしい変化を遂げる。
餡子ののぼりが目印のインターネットカフェにいる。絶滅を危惧された喫茶店の一角で一心にお餅のなかのいちごを屠る。
御霊の供養みたいな時間と心配そうにぼくを見つめるきみとの距離。空間に張り巡らされたネットワークの深い溝からドット押し寄せる傍若無人なヒトの影。
いちご大福を食べ終えると貝殻の上に寝そべったごまふあざらしの気分でぐたーときみのお隣りで横になった。
人工知能の店員さんがいいました。「華奢な夜をお過ごしください」
きみとぴったりと手を繋いでもひっつけない仲だもの。ぼくが手を離すときみはどこかへ飛んでゆく。小さな鳥の去る姿を夜空に追うのは困難だ。
「ぼくと一緒に帰ろうよ」
夜のずっと奥の空の細道を抜けて。
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