水 仮葬
こしごえ

いつからか
誰彼たれかれのすがたもなき その水
そののもとの あおぐろむくろ
うごかずうごく
四肢のしし

― … ヒツギには、
  わたしの結婚指輪をいれてありますの。
― 誰よりおくられたものか?

(ソノモノスガタナキエロスカラ)

― 刻みつけたのです。わたし。
― いっしょなんだね?
― いいえ………
― その人とは?
― 人では御座いませんの。
― ………そうか

四肢の肉
かおり朽ちていく
しししっしししよし よ………

(火葬場)

けむりが風になびいておりました。
その雲、あお空からみずからのおもさにたえかねてキララキラと、
このからだをうちならしていったので御座います。
天気雨。

 蒼空へ垂れて
 いった絵具えぐゆらゆらと
 素露そろのけむりが
 對象たいしょうをなした

 ( イコウ ノ コト )

くろしょうぞくを身にまと
過去の死をしったみずからも生まれて間もなく仮死
を体験したという事実をしってからというもの。
茶碗をもつたび箸のさきのものをくちに運びつづけるかぎり
と時空間で化合しているいまのことわり
とかすかないろがある
  のみである

何ものか ?

― お酒をあおっておりましたのわたし。
  水でものむように。それこそ、
  わたし、あおっておりましたのよ?
― …… わかります。
― いいえ、
  … いただけなくてよろしくてよ?
― はい、
  … ませぬ。

  ( ほんとうに、それは、ふっていた )

その水
かがやいてふりかかり、
私を、
濡らしたのであります





個人サイト「As H System」・詩集「遺伝子」掲載作品


自由詩 水 仮葬 Copyright こしごえ 2005-05-24 12:03:42
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