いつからか
誰彼のすがたもなき その水
その
夜のもとの
黝き
躯
うごかずうごく
四肢の
肉
― … ヒツギには、
わたしの結婚指輪をいれてありますの。
― 誰よりおくられたものか?
(ソノモノスガタナキエロスカラ)
― 刻みつけたのです。わたし。
― いっしょなんだね?
― いいえ………
― その人とは?
― 人では御座いませんの。
― ………そうか
四肢の肉
馨り朽ちていく
夜
しししっしししよし よ………
(火葬場)
けむりが風に
靡いておりました。
その雲、あお空からみずからのおもさにたえかねてキララキラと、
この
體をうちならしていったので御座います。
天気雨。
蒼空へ垂れて
いった
絵具ゆらゆらと
素露のけむりが
對象をなした
( イコウ ノ コト )
黯しょうぞくを身に
纏い
過去の死をしったみずからも生まれて間もなく仮死
を体験したという事実をしってからというもの。
茶碗をもつたび箸のさきのものをくちに運びつづけるかぎり
と時空間で化合しているいまのことわり
とかすかないろがある
のみである
何ものか ?
― お酒をあおっておりましたのわたし。
水でものむように。それこそ、
わたし、あおっておりましたのよ?
― …… わかります。
― いいえ、
… いただけなくてよろしくてよ?
― はい、
… ませぬ。
( ほんとうに、それは、ふっていた )
その水
かがやいてふりかかり、
私を、
濡らしたのであります
個人サイト「As H System」・詩集「遺伝子」掲載作品