物体
岡部淳太郎

自らの意志で動かないものを
普通は物体と呼ぶ
だとしたら
この意志の届かない手足は何だ?

十月十五日
この日を堺に
俺の左手足は麻痺し
俺の意志の届かないものに成り果ててしまった
自分の左手足が他人のもののような
そんな違和感に あれ以来
苛まれるようになった

しかし この手足は明らかに
俺の肉体の一部である
それが独立して叛乱を起こしたとでもいうのだろうか

俺の身の周りにはいまも
意志から解放された物体ものどもがあふれている
そいつらは人の意志と無関係に存在し
人の意志のくだらなさについて
人が寝静まった深夜に
人にわからぬ言語でひそひそと囁き合っているが
俺の意志から離れたこの左手足も
今夜 その囁きに加わろうとしているのだろうか


(注)「物体」に「ものども」とルビをふるのは、岩佐なをの詩から。




(2024年11月11日 PM6:56)


自由詩 物体 Copyright 岡部淳太郎 2024-11-11 19:23:46
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