病中
岡部淳太郎

やまいだれ疒とは、面白い言葉だ。「疾病」など主に
病気に関する漢字に使われる部首のことだ。
いま、俺の脳内にやまいだれが垂れ下がっていて、脳
の底にぽたぽたと病の元を滴らせている。また、やま
いだれの内側には、小さな‪✕‬印のような出血。こいつ
のせいで、俺の左手左足は麻痺してしまった。俺はい
ま、身体全体でやまいだれの滴りの底に落ちようとし
ている。そこから何とか逃れようとやまいだれの外に
出ようともがくが、左手左足が動かない。脳内の‪✕‬印
から脳の底を恐る恐る見下ろすと、やまいだれから滴
り落ちた病の元の群れが不気味に蠢いている。俺は溜
息をついて、希望を求めるように上を見た。やまいだ
れの外では、俺のこんな状態にも関わらず、変わらぬ
空が拡がっていた、


︵2024年11月︶


自由詩 病中 Copyright 岡部淳太郎 2024-11-09 19:28:40
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