病棟
レタス
木枯らしの渦巻く中庭で本を読んでいた
まだ蒼い銀杏の葉がページに挟まり
栞
(
しおり
)
となって
ぼくはそのまま本を閉じた
階段を昇りきると
磨かれた長い廊下は光り輝き
影を失くした透明な人々が通り過ぎてゆく
彼らには目的などはなくて
時間を消費するために
ただひたすらに歩いては
忘れかけた歌をくちずさみ
やがて白い
繭玉
(
まゆだま
)
のベッドに還ってゆく
ぼくも影を失いベッドに戻り
訳もなく青い涙を流した
自由詩
病棟
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レタス
2024-11-07 21:49:16
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