長い夜
塔野夏子
太陽を焦がし
月を凍らせ
空を封印する
それから窓を閉じる
君の意識が悲しみで朽ちてしまう前に
魔法が あるいは
麻酔が必要
見えない網に絡まってしまった
言葉たちを
ひとつひとつほどいて
自由にする
そんなことを夢みてしまう
夜は長い
深いところでひっそりと湧いているはずの
泉へと降りてゆく
あるいは降りていった
あるいは降りてゆくことを願っている のか
自分のいる場所が
過去なのか現在なのか未来なのか
現実なのか願望なのか
わからない
あるいはそれを
君なら教えてくれるだろうか
あるいはやはり
魔法が あるいは
麻酔が必要 か
君は今何処にいるのだろう
太陽を焦がし
月を凍らせ
空を封印する
それから窓を閉じて
長い夜
眠りについたのは
君だったか
それとも
ひとつ ひとつ ほどかれた
言葉たちがまた何処かで
見えない網に絡まっていなければいいが
自分がいる場所がわからなくても
深いところでひっそりと湧いているはずの
泉へと降りてゆけば
あるいは其処に君がいるだろうか
過去も現在も未来も
現実も願望も
花束のように
抱えて
意識が悲しみで朽ちてしまう前に
そんなことを夢みてしまう
夜は長い