ものぐるほし
そらの珊瑚

もとより文鳥は風切羽を切っているので
高くは飛べないけれども
不便はない、という
狭いこの診察室で暮らしていくには
ここには空がない
文鳥は空を知らない

ねえ
鳥の脚を見て
そこだけかつて恐竜だったなごりが息づき
瞬間
鋭い爪に臓腑をつかまれ
おののく
古代から続く永い時間のなかで
浮かんでは消える
失われたものと
今ここに在るもの

ぬけおちた羽毛は死んだ細胞
らせんを描いて
ひかりのなみを無言でおよぐ

スピッツのなかの採血は
みはてぬ空をめざす

あなたも
ときのながれに負けまいとして


自由詩 ものぐるほし Copyright そらの珊瑚 2024-11-05 11:30:39
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