ハイパーソニック。まぶしくて、くらい、ハイパーソニック。
竜門勇気
街道沿いに流れている川の周りでは小さなビルが
うなだれたまま冷たくなった廃墟を眺めている
公平な爪が選ばれたビルをついばむ
粉塵に慌てふためいて浴びせられた水のしずくのむこう
太陽かなんかの光が眼鏡の向こう側で虹のまがい物になって
スペクトラムの端っこから端っこから端っこまで
まるで奇麗なもののように振舞っている
ふざけんじゃねえよ、ふざけんじゃねえ
星にしゃべるように自分と夢におちる
今までは美しいと思っていた虹の中で
誰かと歩いてく
珍しく少しだけしか酔っぱらっていなくて
どこかで転がり落ちた痣が痛むわけでもない
何てすてきな日なんだろう
秋が始まって夏のTシャツに薄いパーカーを羽織って
茶色い澱の塊が流れていく川べりを歩く
小さな空色の種が靴紐に絡まることも
すれ違う人の香水があまりにも強すぎることも
どうでもいいって思いながら
夢中になって誰かと歩いていく
太陽かなんかの光が電信柱に切り分けられている
まぶしい。くらい。
不愉快だ、気持ちいい。
君はいない。僕はいる。
不愉快は、もうここにはいない。
太陽が切断の不平を伝えるために
がれきを掘りおこしてレターセットを探す
光と切断をまたぐたびに
破裂する虹のような光が僕がここにいべきではないと
責めているみたいで
まぶしくて、くらい
すこしだけ腐った何かのにおいと
どこかでぶっ壊されてる建物のがれき
地面とぶつかる音と少しだけ舞い上がる小さな声
どこにも残らない過去の中で過ごした人、笑い声、床に落ちた靴墨
白く鈍って、もう磨かれることもないガラス
何度か訪れた強い雨で泥が散って少し汚れたドア
止まることが許されなかった部分
止まったままの全体
この街道で変わることができなかったのは誰だろう
今までは美しいと思っていた、破壊されたビル
何が美しくなっているのだろう
何が美しくなかったと思っていたのだろう