シーちゃん
リリー

 小顔で整ったお顔立ち
 吸い込まれてしまいそうなブルーの瞳
 それは友人宅を訪問した日、
 初対面だった彼女

 リビングテーブルの空いた椅子で
 貴婦人の如くポーズをとり
 私たちの会話を聞く
 彼女の名前は「しらす」

  ある親切な人がいてね
  へその緒をつけたまま風邪引いてた赤ちゃん猫、
  拾ったのよ
  献身的な看病で元気になると
  その人が私に連絡をくれたの

 友人は里親になった経緯を
 熱っぽい口調で語ってくれた
 「ちょうどその時、シラス丼が好きで夢中だったから」
 魚の名前をつけられてしまった彼女

 珈琲がニ杯目も空になって目を落とす
 白いカップの底
 リウマチを患い療養する
 子供のいない友人と
 彼女との日常が、そこには
 時を縫うて織り上がり
 天地に唯ひとつのタペストリーとなって
 映りこんでくる

 「シーちゃん!」
 帰り際、友人の呼び声に彼女は
 その背中へ飛び付くと
 肩を回り軽やかに床へ着地する
 同じ猫好きの旦那さんにこれはしないらしいのだ。
 


自由詩 シーちゃん Copyright リリー 2024-10-21 12:15:07
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