Psyco killer
中田満帆
リナ・サワヤマのNME記事を片手に
芝の泥濘みにつまづいてふりかえったときには
きみの寝室から火の手があがっていたんだ
おれにはよくわからない
おれのことぜんぶが
やがてサイレンが迫るなかで、
電気工作の授業のとき厭な教師のばかたれがおれに囁いた言辞とか、
舌がからみそうなほどに不愉快な父親の長い説教だったり、
スイッチの切れたテレビみたいに冷たい母親の態度やなんか、
クラスメイトの生徒会長が話したくそ過ぎる業績だとか、
あまりにも急な幕開けでおれの頭が喋り始めるんだ
きみの望みは叶えられないし、
そもそも望みってなんだ?
おれに教えろよ
家々が遠ざかって、
霧のなかへ這入るのはいったいだれの番だい?
きみにもきみの友人たちにも教養ってもんがなかった
だからすべてを棄てて火をつけた
だからすべてを棄てて走る
審判などケツ喰らえ
イギリスでユダ公がいった、──「日本は幸福だ。街が破壊されたことで発展をとげた」ってな
だったらおれはこういうぜ、──「ユダヤは幸福だ。民族浄化のおかげでじぶんの国を創れた」とね
糞でも味噌でも浴びるがいいぜ、でもおれは知らない
でも、おれは知らないんだ
猟奇殺人者?──なんなんだよ、それ
原水爆の父を慕うなら、
ガス室の父もたっぷり愛さなきゃね
おれたちゃ、やつらにとっていまだに人間じゃないらしいぜ
きみなら笑えるだろ?
やつらにとっていまだに人間じゃないらしいぜ
きみなら笑えよな?
いまだ人間じゃないらしいぜ
ハッハと笑ってろよ
きみが人間じゃないことをハッハ
エテ公に過ぎないおれたちを人間扱いするのは金だハッハ
値札がすべての決定権を肯定するんだハッハ
愛のないセックスの果てで
おれは産まれた
セックスのない愛のなかで
おれはきみに見蕩れた
すべては過去のこと
過ぎ去って消えた映画評論の見出しってやつで、
くれぐれもおれに触るな
帯電したまんま、
魔法がとけないんでね
くれぐれも用心しな
おれの渾名は"you fucking so much"──ゴクロウサンってことだ
逃げろ、
もうじきおれの乗せられた警察車輛が崖を突っ走る
逃げろ、
転落する車のなかで最後の逃亡を夢見ながら、
逃げろ、
きみの残像にむかって儚い射精をするんだ
逃げろ、
逃げろ、
逃げろ、、、、、