柔らかい死體人形
医ヰ嶋蠱毒

それは断頭台の隠喩である
凍り付くのは
おまえの眼球ばかり
埋葬することで瞳孔から融かす
孵化を俟つ間に新しい識覚を贖っておけ
此処はヒュプノスの世界
慰霊と散骨の羈旅
おれの腑で首を吊ったおまえの為に
先触れたる蟲が
畸型のドグマが
浴槽で睦み合いながら瀉血に耽り
硝子で輪切にされた奔馬の胎に
詩語を托卵するだろう
喇叭を鳴らせ
魂魄は賢者の海を掘鑿し
軈て白い殻を
溷濁した網膜を破る唄
柔らかい死體人形
それは断頭台の隠喩である
それはヘカテーの神話である
漸く展いた薄翅から
一枚の鱗が剥離し濤聲を聴くように
新しい識覚は殺されてしまうから
仔羊の諱を考えておくといい


自由詩 柔らかい死體人形 Copyright 医ヰ嶋蠱毒 2024-10-14 20:10:40
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