Heart beat
リリー

 
 肌にヒリヒリとした
 痛みこそ忘れ去られた闇は
 東の、明けきらぬ雲の幕に覆われている

 耳にのこるICUの輸液ポンプのモータ音
 蛍光灯で煌々と照らされる空間は
 ただ白っぽく広がっていた 
 面会での帰り際、
 母が目覚めて私へ呼びかけた一言に
 涙ぐむ看護婦
 
 「もう遅いから気を付けて帰るのよ」
 意識が朦朧としていて
 何故、遅い時間だと分かるのか

 二十三時を回り
 人影の無い坂道を下る
 途中で、自転車を止めて眺めた
 高架鉄道を走り去る電車がまばゆかった

 鉄道の軋み、ゆく先に
 こたえにならない果てがある
 佇む足裏を刺しつらぬく
 めまいに襲われるようなヒビキ
 
 

 

 


自由詩 Heart beat Copyright リリー 2024-10-13 15:40:36
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