レモンスカッシュ
リリー

 
 氷鳴る
 グラスの縁に刺さっている
 大きめなカットレモン
 摘み上げて絞れば
 目にもこまやかに射しこんでくる
 濃度を増す酸っぱさ

 其処は尾道の坂の途中にある喫茶店
 二歳年上の同僚の前だから
 絞ったレモンへ
 かぶりつき皮に歯を立てる
 実をしゃぶりまくって小皿へ置いた

 会社での密かな想い人
 その年下の男がまた別の課の
 若い娘へ気持ちを寄せているらしい
 と 噂に聞く夏旅の午後

 ストローを咥える唇の奥に、
 苦味帯びる酸っぱさが滑りこんできて
 ほんの少し
 ガムシロップを注いでみる
 
 
 

 
 
 


自由詩 レモンスカッシュ Copyright リリー 2024-10-12 14:08:07
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