棚機つ女と姦通す
ただのみきや

交じり合う水の響き文字にはなれず
木陰に隠れ 泣く者もなく憎まれて
契りもけむる朝 嗄らす声すらなく

爆ぜる肌 墨でなぞった夜の谷
差すべに月になじむことなく
ゆがむ静寂に 息を重ねて

虫に食われた恋文の
鏡の文字の逃げる間の魔よ
歌うなら上澄み
泥土でふるえる鏃の夢


                 (2024年10月6日)







自由詩 棚機つ女と姦通す Copyright ただのみきや 2024-10-06 14:31:33
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