郷の風景
田中教平/Kou
既視感のある風景だ
どこか懐かしさだって感じて
あの青い山や
白い雲だって
いつか脳内に集めたものだ
そこでこのくさはらに
ひゅうと風吹く
今私は孤独ではない
妻がいるから孤独なんじゃない
もっと深く
こころの井戸を潜っていけば
私たちは繋がっていた
孤独であるということさえ
私たちが繋がっていた
その証左だ
いつか私は荒くれの海を
ひとり装備の少ないボート
進んでいたような気がするよ
ひゅうと風吹く
ひゅうと風吹く
今ではすべて新鮮な世界だ
既視感は確かに変わらぬ
しかし私の
肌の呼吸はしかと新しい!
残されて
自らを残して
吸いこまれゆく
身、一点
今
何も恥ずべきことはない!