炎昼
リリー
雲よりも
高いところの虚ろな光
欠けた兎影に 目を凝らす
背後で、製紙工場の正門から細い通りへ出る
大型トラックのタイヤが路面に擦れる
緑色の金網が張られたフェンス越しに眺める
母校のグラウンド
夏休み中で閉鎖されたままのプール
大きな体育館のアール屋根は
銀色でまぶしすぎる
壁には白いオープンフェイスに黒の文字盤の時計
トラックが走り去れば
また 静寂が戻ってきて
おだやかな熱砂の海面に
大きなうねりをあげて
一頭の白鯨が、ゆっくり西へ
進みゆく
碧く流れる潮風
八月の炎昼
厭世的な時間を白く塗りつぶした遠景の
どこかで水没している懐中時計
沖に浮かぶ舟から
その秒針を耳にする
名も無き大洋で鯨をながめる
八月の炎昼
わたしにも還る岸壁は無いのだから
西へ 進み行こう
一人の私の
ひとつの生き様