のびやかに九月は流れていた
山人
読点の無い散文詩のように
ひたすら遠くへ限りなく続くかのような山道を刈る
それは、その行為はいったい何なんだろうと
我ながら思ってしまう
幼い自分、青年期の自分、雑多な怨念、過去の病的な行いや
あらゆるものを刈り倒してゆく
そして刈られるはずの山道は私のための増殖までしてくれる
もっと苦しみをあたえよう、もっとつらさをあたえよう
その鉄のような親切を
私のこの壊れかかった老体でうけとめよう
山頂には濃いガスと鐘付きの山頂道標が立ち
どうあっても表現できないような詩的な面持ちを醸し出していた
古い血と新しい血が大気に混錬されているというような
老人の下山は真摯な楔のように言葉を発することもなく
無言の言葉があちこちに散乱していた
登山は意味を持たなくて
下山がすべてを締めくくる
汗一つかかない今日
田園は平たく秋をいろどり
のびやかに
九月は流れていた