台風のあと
そらの珊瑚

からりと晴れた
あさ、きのうまでのあめかぜがうそのように
ジンジャーホットティーはからくてあまい
のどをとおりすぎるとき
ギフトのように細胞にしみた
暑さをまいとし更新するような夏
この夏もまたそうだったけれど
こうやってゆっくり季節はかわっていく
ひとなつを生きてサボテンはじわじわやせた

とつぜんせみがなきだす
まるで耳のとなりではじまったような
目の覚める大音量で
声のでどころをさがす
家のかいだんをのぼったところの
ちいさな西向きのまどの網戸につかまった
つくつく法師が
この家全体を楽器にしてふるわせていた

ほんのわずかなワンコーラスは

いのちは
生まれては死んで
だれかの手をかりて
だれかに手をかして
そうやってつないできた
永遠みたいな一瞬


自由詩 台風のあと Copyright そらの珊瑚 2024-09-05 13:10:56
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