青と碧
ヒロセマコト

日暮れとともに出港し
太平洋を南下する航路
フェリーの舷側が
海面を撫で
闇の中に小さな白波を立てる

夜半に目が覚め
風にあたろうと
デッキに出る扉を開き
手すりにもたれた
夜空より暗い海をのぞきこもうと

そこで見たものは
船を取り巻く無数の青い光
船べりが立てる波に反応して
青い炎のように発光する
夜光虫という生命の輝き

発光しては
航跡の中に消えていく
どんな豪華なイルミネーションも
あれを超えることはできない
私は時を忘れて見入った

何十年も前に見た光景が
いまだに私の心を震わせ
記憶の中で発光し続ける
青とみどりを溶かしたような
あの絶妙な色合いで


自由詩 青と碧 Copyright ヒロセマコト 2024-08-31 23:08:46
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