ゆめなかの夢
秋葉竹
1
深い森の奥で
いまあのひとは旅立とうとしている
黄金の光を身に纏い
短い一生を駆け抜けて
いまあのひとは旅立とうとしている
低い空に在る
赤い大きな月が
あのひとの最期を
見守ってくれている
晴れた夜空には
無数の星たちが
瞬いてくれている
いままで闘いつづけ
傷つきつづけた
その身体(からだ)を
その精神(こころ)を
ゆっくりと寝(やす)ませてあげてほしい
そして新しい生命(いのち)として
今度は闘わなくていい生命(じんせい)を
生きてほしいと想う
2
新しい夢が創造つくられる空へ
あなたは旅立とうとしている
空に響くメロディーは
あなたの愛したひとの歌声だろう
まだ年齢とし若い気高い魂のまま
美しくましろなその肉体を抜け出て
空へ上昇(のぼ)ってゆくだろう
やさしい微風かぜに吹かれて
あたたかい夜空を飛翔(と)ぶだろう
あたたかい夜空に
あたためられながら
そんなゆめなかにゆったりと揺れながら
あなたが守ろうとした
この
美しく素晴らしい世界は
きっと
立ち直ることができると想う
そして
そういった
すべてのやさしい世界に残された私
あなたにおいてゆかれた私は
やっぱりあなたを恋しく
想う
いつもあなたに出逢いたいと
想う
そんな
限りなく愚かなゆめをまだみてる