月光
秋葉竹


  

覗きこんでも視えない
暗く深い夜の底

だから月灯りを求めて
宇宙をみあげる

そこには夜よりも深く
氷よりも冷たい闇が

かすかに震えながら
息をしている

月光

だけが闇から浮かびあがり
赤銅色の光りを放つ

震えながら消え入りそうに
死にそうなくらい孤独そうに

月光

だけがふり降りて来る
まるで翼を捥がれた堕天使のように

苦しみを頭上の冠にして
悲しみを鱗粉のように振り撒きながら

ゆっくりと止まりながら
ゆっくりと止まりながら

月光

だけを眺める私の命のちいさな蝋燭は
濡れるようにしっとりと灯りつづけるだろう

月光

のもとで生きる希望や幸福を
恐れながらも希みつづけることだろう

私を憐れむねじれた夢の中で
すべてを忘れて眠るための幕を引くために








自由詩 月光 Copyright 秋葉竹 2024-08-23 00:01:42
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