月光
秋葉竹
覗きこんでも視えない
暗く深い夜の底
だから月灯りを求めて
宇宙をみあげる
そこには夜よりも深く
氷よりも冷たい闇が
かすかに震えながら
息をしている
月光
だけが闇から浮かびあがり
赤銅色の光りを放つ
震えながら消え入りそうに
死にそうなくらい孤独そうに
月光
だけがふり降りて来る
まるで翼を捥がれた堕天使のように
苦しみを頭上の冠にして
悲しみを鱗粉のように振り撒きながら
ゆっくりと止まりながら
ゆっくりと止まりながら
月光
だけを眺める私の命のちいさな蝋燭は
濡れるようにしっとりと灯りつづけるだろう
月光
のもとで生きる希望や幸福を
恐れながらも希みつづけることだろう
私を憐れむねじれた夢の中で
すべてを忘れて眠るための幕を引くために