詩人がAIを倒す方法
完備 ver.2

(0-1) 本稿はあくまで適当な文章である。最後まで読んでも納得のいく説明は得られないと思う。この点を断ったうえで、とりあえずのメインの主張を述べると

私が自作品を読み返して思うのは、良い作品は良い構造を持っているということである。構造に沿って言葉を並べているので、自然と言葉遣いが平易になる。奇抜な語彙を用いたり、難解なメタファーを用いずとも詩が成立する。一方、駄作は言葉の組み合わせを工夫するが、全体を貫く構造が弱い。

ということになる。(※「詩の構造」の定義は何だろうか? 私も知らん。まあ断片的なひとつひとつのフレーズではなく、全体を通して見えるものだとふんわり捉えていてほしい。)

これに関連して、

遅かれ早かれ詩人はAIに負ける。完膚なきまでに叩きのめされる。ただし、今後しばらくは、良い構造を持つ作品を書くことが、人間のAIに対する優位性になるだろう。

ということも言いたい。

(0-2) 私の経験によれば、AIには「新しいフレーズ」程度であれば生み出すことができる。実際、AIによって生成された作品

https://www.breview.org/keijiban/?id=13333
https://www.breview.org/keijiban/?id=13333
https://www.breview.org/keijiban/?id=13336

を参照していただきたい。これらは、AIによって生成された断片的なフレーズを、最低限詩の体裁を成すように私がつなぎあわせ、全体を整えたものである。衆目を引くために「AI-Generated」とタイトルに書いたが、ある意味で私とAIの合作である。

一方で、AIは、(詩に限らず)全体の優れた設計図を書くことはまだできない。今後しばらくはできないであろう。AIによる詩作が遅かれ早かれ人類を凌駕するのは明らかだが、今後しばらくは、言葉遊び的な作品ではなく、意味において強い一貫した構造を持っている作品を書くことにおいて、人間はAIに対する優位性を維持できるだろう。


(1-A) 良い作品とは何かを考えるためのサンプルとして、私の作品のなかから、優れている作品と劣っている作品をそれぞれ3つずつ挙げよう。ここで言う「優れている」「劣っている」は純粋に作者である私の主観である。数字は順位ではなく便宜的な記号である。


優れている作品1「coarser」

  かれからの手紙のなか
  砂埃のむこうを
  夥しい自動車が過ぎて行った

  何番目に僕がいたでしょうか
  と、かれが問う
  直前の
  ぐちゃぐちゃと潰された誤字を
  読むことはできなかったが

  わたしたち、と言えば
  規定される範囲が
  まだ、あるなら
  わたしたちの心象風景は
  細部を失っていく

  かれもわたしも、きみを、きみと呼ぶ
  きみは、ローソンが
  固有名詞だと言い張った
  この町の大体はローソンの窓に映る
  とも、言った

  かれからの手紙のなか
  砂埃のむこうを過ぎて行く
  夥しい自動車、それらが
  本当に自動車か
  わたしはときどき、判別できない


優れている作品2「footprint」

  あなたのくれた比喩でない不等式を
  証明できないままカルバリの丘に立てる

  これがおれの銀河だ
  走馬灯のような生活はマイスリーがさらっていく
  おれはいまから
  おれの足跡がいくつあるのか、真剣に数えたい


優れている作品3「激」
  あなたはくちびるを固くとじて
  わたしは
  かみなりをきいていた
  無人でない駅のひとごみ
  ベンチに残る
  前のひとの温度

  夏 情欲とみまがうほど
  はげしい雨が降って
  わたしは乱雑な鞄のなかに
  折り畳み傘を探していた
  あなたは
  消してはならない炎のように
  愛を庇った
  ほっそりとしたゆびで

  夏 愛とまちがえるほど
  はげしいかみなりをきいていた
  あなたはくちびるを
  固く 固く とじていた


劣っている作品4「reflux」

  帰省する夢 等しいよね
  あくまでも川沿いで
  生活 立ちあがる所作 ア あなた

  発散に目を細める空 収束を聞き違える耳
  手触りで不変性を確認して

  あなたはわたしよりどれくらい大きいだろう
  スケーリング、
         スケーリング、

  キラキラ の メロディ の 川面
  また溢す子ども 大切な不等式を
  ほどくポニーテールが
  魔法みたいに絡まる 匂いに呆けた いつか

  いつか 瞳でなく
  隣り合えたらいいね
  たとえば肩と肩 あるいは積分の最果てで
  わたしたち に なれたら


劣っている作品5「imitate」
  許さないでくれ
  えいえんの二日酔い、
  寝不足のまなこで
  まぼろしと見まがう朝陽
  からすのような
  日本にいない鳥の名を
  教えてもらう
  この国の人はこう呼ぶんだよ
  数回復唱して、すぐ忘れた


  数式も、セックスも、
  ことばは問題にならないから、さみしい


  飛行機のつばさが揺れるとき
  あなたの国のことばで
  あなたに愛を告げる
  驚いたひとみ、
  すこしおどけて発音を正され
  もういちど
  真似るように、練習するように、
  あなたに愛を告げる


劣っている作品6「夏」
  カーテンあけて世界に接続する
  わたしの内燃機関
  26℃の冷房
  うす青い朝を映す窓は
  精巧なディスプレイか、鏡か
  夏の桜並木
  二車線道路を過ぎる車はまばらで

  幾世代も巻き戻す夏、
  セミの鳴く
  うす青い街を歩き
  ギラギラの自販機
  まだ150円だった
  コーラで流し込むマイスリーは
  ゆるやかに巡り
  やうやうしろくなりゆく山際を眺めた

  幾世代も早送りする夏
  ベランダで
  線香花火をする女
  そこはこちら側か、あちら側か
  確かめようと窓をあければ
  部屋に夏が混ざる


(1-B) ChatGPTにそれぞれの詩を採点してもらったのでそのままコピペする。残念ながら、私が調教したAIであるにも関わらず、AIの判断は私の感覚とは異なるようである。

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以下の順に6作品を評価し、最も優れた作品に90点、最も劣った作品に10点をつけました。

### 1位 (90点) - 作品3「激」
**分析**:
- この作品は、内外の緊張感と抑制された感情の対比が非常に巧妙です。視覚的・聴覚的イメージが交錯し、静けさの中に潜む激しい感情が詩全体に緊張感をもたらしています。反復や強調、メタファーの使い方が非常に効果的で、感情の複雑さとその抑制が鮮明に描かれています。

### 2位 (75点) - 作品4「reflux」
**分析**:
- 「reflux」は、時折断片的ながらも、美しい言葉選びと緩やかなリズムが特徴的です。記憶や感情が複雑に絡み合い、独特の世界観を形成しています。スケーリングや積分などの数学的なメタファーが詩に奥行きを与え、感情の発散と収束が巧みに描かれています。

### 3位 (65点) - 作品6「夏」
**分析**:
- 「夏」は、過去と現在が交錯するなかで、季節の持つ感覚的な側面と人間の内面的な葛藤が巧みに表現されています。夏の情景描写と、時空を超えた感覚が独特であり、季節の移り変わりが感情の推移とリンクしており、印象的です。

### 4位 (55点) - 作品1「coarser」
**分析**:
- 「coarser」は、言葉の密度が高く、内面的な思索が中心に据えられた作品です。具体的な描写と抽象的な思考が交錯し、孤独感や不安定な感情が表現されています。ただし、全体としてやや散漫な印象も受け、感情の焦点がややぼやけている点が減点要素です。

### 5位 (40点) - 作品5「imitate」
**分析**:
- 「imitate」は、異文化との関わりと、それに伴う言葉や感情の混乱を描いています。感情が深く掘り下げられているものの、全体としてやや表層的で、感情の深さが他の作品に比べて少し劣ります。

### 6位 (10点) - 作品2「footprint」
**分析**:
- 「footprint」は、印象的なイメージと強い感情が込められているものの、他の作品に比べると、表現がやや単調であり、内容が浅い印象です。また、マイスリーのモチーフが過去に何度も使用されており、他の作品と差別化が図れていない点が減点の要因となりました。

このように各作品を評価しました。詩の評価はあくまで相対的なものであり、感情やテーマ、技法が異なるため、それぞれに独自の魅力があります。
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(2-A) 私は作品1-3の方が優れており、作品4-6の方が劣っていると思うとAIに伝え、作品1-3に共通する優れた点をまとめてもらい、作品4-6と比較してもらった。—-----------------------------
作品1(「coarser」)、作品2(「footprint」)、作品3(「激」)に共通する優れた点は以下の通りです。

### 共通する優れた点

1. **緊張感と抑制された感情の表現**:
- これらの作品は、感情が抑制されている中で、内面的な葛藤や緊張感を効果的に描いています。特に「激」は、雷鳴と愛の葛藤が表面的には抑えられた表現でありながら、強い感情の衝突を内包しています。

2. **視覚的・聴覚的なイメージの強さ**:
- これらの作品は、鮮明な視覚的および聴覚的イメージを用いて、読者の感覚に訴える力が強いです。「coarser」では砂埃と自動車、「footprint」では銀河やマイスリー、「激」では雷鳴と雨音が生き生きと描かれ、感覚的な世界を作り上げています。

3. **抽象と具体のバランス**:
- これらの作品は、抽象的な概念と具体的な描写のバランスが取れており、読者に多層的な解釈を促します。例えば、「coarser」は手紙の内容とその不確かさを通じて、人間関係の曖昧さや孤独を表現しています。

4. **象徴的な表現**:
- これらの作品は、象徴的な表現を多用し、感情やテーマを暗示しています。特に「激」の雷鳴と雨は、情熱や愛、恐怖の象徴として機能しています。

### 作品4-作品6との比較

1. **感情の深さと強度**:
- 作品1-3は、感情の深さと強度が高く、読者に強い印象を与えます。一方、作品4-6は感情がやや分散しており、印象が薄くなる傾向があります。特に「reflux」や「夏」は、テーマやイメージが断片的で、感情の一貫性に欠ける部分があります。

2. **表現の一貫性**:
- 作品1-3は、テーマやイメージが一貫しており、詩全体に統一感があります。一方、作品4-6では、表現がやや散漫で、テーマがぼやけている印象があります。例えば「imitate」では、文化的な違いをテーマにしているものの、感情やメッセージが曖昧です。

3. **読者への訴求力**:
- 作品1-3は、強烈なイメージやメタファーを通じて、読者の感覚や感情に強く訴えかけます。一方、作品4-6は、表現が穏やかであるため、読者に強く響かない部分があります。特に「夏」は、過去と現在を交錯させる表現が独特ではありますが、その独自性が弱まっています。
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(2-B) 私が冒頭で述べた「詩の構造」という話は、ChatGPTの言う「表現の一貫性」「統一感」に近いか。

はっきり言って私は冒頭にリンクを貼った AI-Generated Poem #1-3 に何か良い構造があるとは思えない。あくまで断片的なフレーズの集合であり、最低限詩の体裁は成している程度のものだ。作品4-6は「内容の希薄さを表層的な表現の工夫で取り繕っている作品」という印象を受ける。よくもまあこんな酷い作品を書いたものだ。それに比べ、作品1-3は良い構造とそれにふさわしい平易な言葉が用いられていて、まああるていどマシな作品に感じられる。全体が明確な意味・意図(=構造)に沿って書かれていて、やはりこういう詩はまだAIには書けないだろうと思う。作品1-3みたいな詩を書けばAIを倒せるんじゃないかと思うんだが、こういう印象論をもっと具体的に説明しろと言われると、とたんに窮してしまう。どうしたらいいんだろうと悩み、こういう不完全な状態で文章を読者に読ませてしまうことを申し訳なくい思いつつ、まあ面倒くさいのでこのへんで文章を終えることにする。


散文(批評随筆小説等) 詩人がAIを倒す方法 Copyright 完備 ver.2 2024-08-19 08:44:08
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