白く漂う
木立 悟
時計 重なり
燃える 時計
開いては閉じる
空の草の目
声と空蝉
途切れ途切れに廻る世界
光っている
触れるものすべてが光っている
夜を動かそうとするものが
凍りついては坂をころがる
金と緑のかたちのいくつか
記憶の右側を昇りゆく
密は白花
点の紫
隔たりは幻
積もらずの冬
晴れには晴れの降る音がして
曇りには曇が降りつづく
外れたボタンの回転は止まず
間違えた拍手の音も止まない
息を吹きかけ
空の蜘蛛の巣を揺らす
ほんの少しの空白の後
雪は地の水に落ちてくる
此処に居ないはずの北の鳥が居て
誰も居ないのに求愛の踊りをする
まるで目の前の景すべてに
求愛するかのように
人が鳥なら鳥を見ない
鳥が人なら人を見ない
人も鳥も空を見ない
人も鳥も 到かぬ火を見る
花の影が虫になり
花に登り 花に隠れる
花は散り 虫は去り
茎の影が地に咲きひらく
夜の淵を流れる月
宙に浮かぶ硝子に降る雪
発光し 発光し
消えてゆく
水たまりから水たまりへの
魂の径を歩む
月が昇りきる前の
白く漂う径をゆく