墓荒らし
凪目

蹴られたこども
ふたりはどろまみれ
ひとりは白濁して
もうひとりは赤黒い
手をつないで
どこまでも走る

着ろ、差し出せ、選べ、脱げ
森では本が喋ってる
文字から孵った蝿たちが
鼓膜の底で巣を作る
憶測、盲信、蹂躙、侮辱
空には凶器がかすんで
雲の筋肉にひとすじ
金色の脈がかけめぐる
光がこどもの胸にも帯びて
逃げる先のないために
しびれが口から歌になる

銀の夜
影と散歩する
手と手をかきわけて
土の深いところへ潜る
怒号、金切り
いちばんやわらかで温かいところ
からまり、もつれ
雷の描く指文字
狂った方位磁石
血の味のする冬の舌

同じ虫を飼ったね
内側から何度腐り落ちても
何回でも手を握れるよ
肥溜めの底に湖がある
ずっと昔にも
一緒に見たことあったよね


自由詩 墓荒らし Copyright 凪目 2024-08-16 22:08:37
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