きみとクロワッサン
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くちびるの動きが多彩なきみ
曖昧にはじまり唐突に終わる

雨があがって緑に固まりかける間に
また飽きもせず芽吹くきみ
何度も沸騰する世界の傍らで
きみが笑って見える
泣いているようにも見える

渇きを知らない喉を通して疑問とも思えない疑問を
繰り返し投げかけるきみ
一番高価な果実を
迷わずえらぶきみと
昨日の過ちをどう計ろう
明日の予定をどう記そう
どこまでも本気に
無邪気なふりして

たっぷり吹きつけた絵の具の流れ具合が
自分たちの意思なんじゃないかと
個室と外界の境いに漂う
やわらかい金属に舐められ
かたい繊維に絡めとられ
それでも心から通じあえるだろうか
クロワッサンとコーヒーくれ
そう呟くだけのきみ
そろそろ
人としての痛みも限界がきているのではないか

突然、何かに気づいた風に泣きじゃくったかと思えば
素早く瞬いて

港を見下ろしている
風のはやりを全身で受けとめながらいつまでも歌う
誰かにむけ、きみがまたねと手を振る
だからぼくは、ぼんやり頷けるのだ




自由詩 きみとクロワッサン Copyright soft_machine 2024-08-01 19:35:34
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