お盆
藤原絵理子


風鈴の短冊に書いた願い事
神社の参道に飾ってもらった
風にくるくる回って
思い出しているのは
遠い日にかすんだ夏祭り


知らなくてもいいことを
いっぱい知って
裸電球に輝いたはずの
ゆかたの柄も忘れてしまった
周りの人々からもらった笑顔さえ


透明の袋で泳ぐ金魚がかわいくて
浴衣の袖がびしょ濡れになった
何枚もポイを破って
一匹もすくえなかった少女に
スキンヘッドのおじさんは
二匹の金魚を透明の袋に入れてくれた


かごの蛍が死んで
べそをかいた少女の頭を
やさしく撫でた手は
遠いあちらの世界で
ひらひらと振るばかり


おりんを鳴らして
手を合わせれば
すさんだこころに面影と声が
帰っていく場所の
穏やかな風と香りを教える



自由詩 お盆 Copyright 藤原絵理子 2024-07-27 23:50:40
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