夏夜のラジオ
本田憲嵩

真夏の日中に上空を塞いでいた、ひとつの低い層がなくなって、青春の夏はより遠くまで反射して、よりいっそう真夏の夜の夢に届きやすくなる。より受信しやすいように部屋のなかの灯りをすべて消す。多分に雨の吹き荒れている不安定なノイズの森、さらにそこに吹きつける比較的周波数のちかい国営第二ラジオの外国語の強風、それらをアンテナの位置を変えながらできるだけ避けて、耳のなかの斧で必死に掻き分けて、耳のなかの耳で聴く。すごくワクワクしていた、あのラジオドラマは本当は一体どんな内容だったんだろう?それは秘密の国からのメッセージ。そんな夏休みの夜を分け合った、そんな夏の夜のふたりがたしかにそこにいた。日清カップヌードルがすごく美味しかった。



自由詩 夏夜のラジオ Copyright 本田憲嵩 2024-07-22 23:29:17
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