やわらかな墓標
塔野夏子



夏にだけあらわれる
小径の奥に
ひっそりとした場所
そこにやわらかな墓標がひとつ

あたりを囲む緑のざわめきの中に
なぜかいつも感じる
揺籃の気配
その中には多分 壊れた玩具の天使がいて

壊れたままに 微笑んでいる――
その微笑みのうえに
かたむく夏の日

やがてひぐらしが鳴いて
それに呼応するかのように
やわらかな墓標は かすかに羽ばたく




自由詩 やわらかな墓標 Copyright 塔野夏子 2024-07-21 09:19:16
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夏について