雲居の空
リリー

 夕立の雲が垂れ込めているのに
 ふりそうにない
まだ降らない
まだ降らない
まだ降らない
 その短いようで限りなく不穏な時
 
 夏草の背の高い奥庭
 開かれた窓に
 夕顔が、何と白いこと
 その横に
 ライラックの樹もだいぶん伸びた

 すっかり暗いうずみに惑わされながらも
 私の胸は花の様に開いていた
 何故
 人を愛した時と同じ心のゆらぎが
 あるのだろう
 快くて熱っぽく
 そして新しい事なのか

 生垣のむこうで
 子供たちが笑い声立てながら
 駆けていく
 雨粒の落ちてくる瞬間をはかっている
 私の耳に足音は
 薄らかな影となって残った
 


自由詩 雲居の空 Copyright リリー 2024-07-10 15:30:23
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