幻視/午睡
ねことら
湿度の高くまとわりつくような熱と空気の密度に対して、肌の内側からゆるく反発するような力を感じている、夏の昼下がり、こうしているとまだ生きていられると思う、それは当たり前のようで当たり前ではなく、尊い命の連続した瞬間の証明なのだと思う、明るく原色の街の中で、自分の指や髪はモノクロのままで染まることなく漂っているように感じる、街角の軒先や自動販売機の隅とか、コーナーごとに自分自身の影は吸着し、暗がりに偏在する空想上の生物の姿を幻視している、陽射しは眩しく、洗うように地面は陽に白くさらされていて、遠くそびえ立つ塔に向かってみなうつむきながら、微笑みながら、徒刑のように歩き続けている