道
夏井椋也
歩んできた日々を
振り返る
一週間前に通り過ぎたばかりの
森の出口で道は消え失せている
歩んできた日々を
振り返る
あなたが遺した道が途切れてから
見知らぬ景色の中を彷徨っている
歩んできた日々を
振り返る
不安と後悔の雨が降り続くこともある
雨上がりの安堵の空には虹も架からないが
気楽なものさ
わたしは道を遺す者ではない
風を読まず
傷を数えず
僅かばかりの哀しみと寂しさだけを
荷物に忍ばせて
彷徨う
できるなら振り返らずに
あわよくば笑みを浮かべて
彷徨う
それだけが
道を遺してくれたあなたへの
せめてもの感謝のしるしだから