氷紋[改訂]
リリー
ハイヒールの足許が男の鼻先を嘲笑う
「欲しければ尾を振ってついておいで」
街の角で ふと女の姿が消えた
「欲しければ、そこで涙をお流し」
※
天上から氷の欠片が
この心臓に刺さったとしても
おびえねばならない事は何もない
雪の夜を雪の中へ
風の夜を風の中へ
彷徨い出ねばならないものへの怯えか
さまよい出よと命令する中枢への怯えか
私を脅やかすものは何?
乳房をくりぬいてしまいたい程
花の束の中で窒息してしまいたい程
ものうい自虐であるとは
でも 、
アングレカムの匂いは甘い
かすかな風のそよぎはなつかしい