影法師はどこへ行った
リリー


 その子の瞳に
 歪な丸さの ヒが躍る
 画用紙の真ん中で
 赤み帯びた鮮やかなオレンジは
 吠えたける

 甘い香りも
 緑の葉蔭も
 棘のある茎も
 パレットに襲って来る溶岩でのみ込まれ
 冷え固まってしまう

 そよとの風も無い
 真空地帯で
 たった一輪のスーパースターが、
 笑うからだ

 むし暑い庭園の一角
 その子の目と指先は休まず描き続ける


自由詩 影法師はどこへ行った Copyright リリー 2024-06-22 10:18:13
notebook Home