【渓流】釣りの組曲
レタス

渓谷の明日は晴れのち曇り
毎週土曜日は4700尾のヤマメと720尾のイワナが放流される

梅雨の中の貴重な天気で釣り人が我も我もと集まって
養殖の魚は警戒心に疎くて入れ食いになる
週末だけで殆ど釣られてしまう
野生に戻るのは僅かだけだ

数を釣りたいわけじゃない
深い緑に抱かれ
透明な水に溶け込んでいたいのだ

釣り上げた魚はナイフで頭を抉り即死させ
鰓とハラワタを抜き鮮度を保つ
過日の週末にそれを見ていた初老の釣り師が言った
ゆっくりしてると他の人に釣られてしまうよと…

渓谷にいるだけで豊穣の時間を過ごしているだけでも良い
毎日が日曜のぼくはウイークデーに渓に入ることにした
梅雨時はかえってゆっくりと釣りをするチャンスだろう

一尾でも夕餉に上れば膳に花が咲く
数が釣れたらサックリと揚げて南蛮漬けにするのも良し
ぶつ切りにして味噌汁に入れるのも良し
西京漬けにするのも良し

兎にも角にも僕は渓流魚が好物なのだ
イワナ・アマゴ・ヤマメ・ニジマス
みなそれぞれに繊細な風味を持っている

さてと…
明日は拡大眼鏡をかけて
魚たちに見えない仕掛けを作ろう


自由詩 【渓流】釣りの組曲 Copyright レタス 2024-06-21 21:45:53
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