夏(緑物語)
山人
疲労と孤独と多忙さの中で日々は疾走していた
緑は際限なくもくもくと広がって
入道雲まで連れてきていた
今年はじめての雷雨の後の静けさは
次第に夕暮れを連れて
切れ長の目尻のようにあたりを覆い
やがて濡れた声でヒグラシの声が
哀しみを連れてやってくるのだろう
イメージは飛行機雲の向こうから糸を大空に垂らしながら
旋回し、僕の脳片にこびりついてしまっていた
ぼくは僕、でも僕はもう、在りし日の私ではないのだった
緻密な健やかさに、ふるふると命が輝いているかのような
野鳥の喉は、なめらかに歌い
暑い日の一日をしめしてくれている