くちなしの花
リリー

 鳥の声もなく
 くちなしの花だけ白く小さく
 風もなく 
 空に 色はなく
 ひたすら降りこめる小さな庭

 かつて花にも心はあった

    ※

  あなたへ

 あの子は まだ明らかには何も知りませんでしょうけど
 こないだ保育所の先生から話をきいて驚きました

 あの子はめったに笑わず、話もよほど必要なことだけしか
 しないそうです
 友達とも仲間外れにいて 
 いつも一人ぽっち
 先生もどうしたらよいのかと困って居られました

 しろ組さんの終わり頃から
 暗い暗い子になったということ
 家では兄に組みついていってすさまじい声を出すのに
 と言ったら
 保育所の反動が出るのでしょうかと先生も
 言っておられました

 すべて情緒不安定なのでしょうか
 母親の心の波が子らへ敏感にキャッチされているのだと思って
 泣けて仕方ありません

 あなたは何か芝居の役割の様に考えて居られる様だけど
 子供は純で敏感な生きているものです
 心のつながりの無い生活を続けていくことの
 恐ろしさを思います

 このまま
 子供達がパパ、アメリカと思っている間に
 二度と会わず別れた方がよいのでしょう
 父の居ない生活に慣れたところですから

 すごいインフレです
 子供の将来も不安です
 月に二十万づつ銀行に振り込んで下さい

 あなたが愛せる人と暮らして下さい
 あなたに感謝します
 そしてお詫びもします
 長い間 苦しみを与えてしまった

 さようなら




自由詩 くちなしの花 Copyright リリー 2024-06-18 11:10:44
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