耳工場
そらの珊瑚

夜の耳工場で働く小人は
めっきり上がらない時給に
ぼやきながらも
今夜も対の耳を作っています

夜は短いようで長く
或いはまた短く
それは人生もおんなじだね
耳を買いに来る人は
そんな夜をひとり歩いてくるのでした
悲しい夜はことさらに
耳を替えてみたくなるもの
替えたとて、なのですが

朝 昨日と同じように目覚めた時は
夜のことは忘れてしまいます
鏡に自分の顔を映してみて
こんな耳だったっけ、と
人は思ったりするでしょう
まるで
自分の耳に初めて会ったかのように
替えたての
不思議な形状に触れてみたりして


自由詩 耳工場 Copyright そらの珊瑚 2024-06-01 14:18:59
notebook Home 戻る