夢の変容
soft_machine
思い出が 目をさます
空き缶をつぶした灰皿にあふれ
かなしみに追いかけられていたあの頃
藍色の水たまりから空にこぼれ
にくしみに追いつめられる前の日
あの子に 今度こそ告げる
きちんと さよならと
思い出が 目をさます
人を愛すること 憎むことをおぼえ
それらを忘れる術を身につけ
井戸ふかく沈めた
時おりふたを揺らしもするが
耳をふさげばいい
土をかぶせてもすむ
しずかに眠りについたはずの思い出が
ふいに きまって夜
波のようにせり上がってくる
それは丸い草原や
別れの窓になって
小川や こもれ日のかがやきの奥へ
叫びながら 落としつづけた小石になって
手放せずにいる 割れた器になって
目ざめた思い出は
目ざめるうちに
別の思い出になれる
何がどう別なのか 私がわかるのは
たぶん、すべてをおわった後だろう
ただ、今はくっきりとした
ひとつの色ガラスになって
あまりにも大きく
つかみどころのない
世界の一部にもどりながら
そこでもう一度 じっとそのまま
ねむりながら待つ