ヒレルに捧ぐ
森 真察人

四万の光りがうねる 烈しいけれどゆったりとした四角形のために
そのうちひとつの頂点は アンプから飛び降り 舞台を駆け回り
ときどきもうひとつの頂点と向かい合い 無言で会話する
あとのふたつの頂点は リズムを創り カリフォルニアの歌を歌う。
台形平行四辺形長方形菱形正方形黄金長方形
どれも彼らにはかなわない

四万六千七百五十五平方メートルの箱は
彼らによってバスケットボール大の領域となり
二時間は五分となる。
調和のとれた四角形は四万の光りであり 四万の光りではない
四万の光りは調和のとれた四角形であり 調和のとれた四角形ではない

主体と客体の別を考える暇があるなら
鼓膜の微かな痛みの信号が滅しないうちに
きみは楽器を手に取り きみのカリフォルニアの歌を歌うべきだ


自由詩 ヒレルに捧ぐ Copyright 森 真察人 2024-05-24 18:52:28
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