指揮
鳥星

生まれつき聾唖を背負った
人生は地獄だと
一本の大きな釘が私の胸めがけて突き刺してきた
その日から私は
果てしない透明の中に自分を失いそうになりながら
無音を指揮する能力を身につけようとしていた

26歳になってすぐ統合失調症を背負った
やはり人生は地獄だと
もう一本の大きな釘が私の胸めがけて突き刺してきた
その日から私は
限りない狂気の中に心を崩されそうになりながら
幻聴を指揮する能力を身につけようとしていた

思えば不思議なことだ
無音と幻聴
この相反する現象が混ざりながら同居していて
二本の大きな釘が私の胸の最奥へ
螺旋を描きながら結び合い
一本の釘になる
その日から私は
引き裂かれそうな自我を保ちながら
矛盾を指揮する能力を身につけようとしていた

私の人生は暗闇に満ちていて
星がひとつひとつ光り輝いていた
私の胸に突き刺さった一本の甘美な釘を抜き取って
指揮棒のように人生の地獄を奏でながら
背負ってきた全ての悲しみの向こう側へ
その祝福を指揮することができるのは
他でもない私しかいない


自由詩 指揮 Copyright 鳥星 2024-05-19 02:37:36
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