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せつない せつないよ、と窓が泣いているのです
泣いているのですこつこつと 風はなぐさめられながら
しわしわとかすれ
ぽろぽろくだけ
かたうでの蟹が ご飯からいくつかどうぞとならべても
どうしても閉じきらないすき間があるのよと
窓は泣きつづけるのでした

 どうして どうして、と

どうしてひび割れていられるのと雨がのぞきこみ
花のかおりがしのびこむものだから
不安でいっぱいで
空は泣くのでした
窓は、本当の自分が透明でないことを知っていたのです

 かえして かえして、と

ほんものの涙のように流れていられたら
どんなに嬉しかったでしょう
金剛石のように だまって映し反せるのなら
いつまでも ずっと立っていられたろうに

けれど どんなにふり払おうと祈ろうと
ゆがみは垂れ はっきりとくすんだ滴ごしにしか
世界を映して返せない窓でした





自由詩Copyright soft_machine 2024-05-18 05:59:55
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