後年
形代 律
生身のひとが
都市に残っている噂とは逆に
鉄路を踏んでゆくと
霊とすれ違った
稀にたたずむ
かつてのひとの家宅は
いま わたしの背丈を遥かに超える蔓草が
幾世紀の愛憎を晴らすように
抱き壊した
霊は俯いて座っていた
目礼を送る
一瞬 目のような部位がかがやいたが
すぐに戻った
彼は草花を怖れつつ
時々は壊れた家を眺めて暮らす
それにしても
わたしの身体も随分と透けてきた
完全な霊になれば
目も耳も鼻も愛憎も消え失せるが
まだ
もう少し
生身のふりをする
歩く
自由詩
後年
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形代 律
2024-05-17 02:58:49
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