夜の街のどこかで
番田 

雨の合間を縫って、少し外を歩いた。公園のベンチに座る、誰かの背中を通り過ぎながら。そこにいる人は、でも、夜も遅いのに何をしているのだろう。そんなことを考えながら、人気のない通りの上を渡ると、昼ごろ思い浮かべていたことについてを今度は考えていた。主に学生時代の頃の事だっただろうか。しかし、記憶というのは、何か強烈なインパクトが無いと残らないもので、それは決して穏やかな旅行の時間の流れといったものではない。そのような意味では、生きていくことの要領の良さを持っている人は、あまり死ぬ時に思い出すことは無いのかも知れない。僕は写真を最近は撮るのだけれどだいたいシャッターを押すのは景色の中で変化が生じた瞬間を捉えるときだ。珍しい鳥が来たり、そこに波紋が、飛んだ魚によって生じた時。何かが生まれた時、そこから立ち去っていく時などだ。僕は、そして、帰り道を歩いていた。桜は花びらも残さずに、花が咲いていたはずの枝に葉をつけている。


駅前にはコンビニが二件並んでいるのだが、消費者にとっては意味がなかった。ガソリンスタンドが並んで建っているようなものだからだ。しかし、ファミリーマートとセブンでは、どちらが勝つかは勝敗がついているように思える。毎日そのような光景を駅前で見させられていると、何となく疲れてしまっているのだけれど。


散文(批評随筆小説等) 夜の街のどこかで Copyright 番田  2024-05-16 02:04:55
notebook Home 戻る