子どもの海
soft_machine

水いっぱいはった洗面器に
色とりどりのおはじきを沈める
ぽちゃり 違う
ぽちゃり もっとやわらかく
水は硝子がらしくゆがんだ環

山の懐にしまわれている
囚われたつばさの自在を浮かべる
ざふり 静かに
ざふぅり とそれはみにくくて
渦とて人がらしくつかんだ器

からだに触れることを知った指や舌に
何かが近づいてくる 何もかもが近い
しゅわっ 耳をすます
しゅわぁ 粒がわれる
それなのに離れようともがく
ひろい沖あいでしおざいが
海のずっと奥に歌いかける
つき刺さる雷について
荒れ狂う嵐について
一瞬の法悦について

街と空とに張られた稜線を
とってまっすぐ引き延ばし
ぴんと鳴らす 雲がうかぶ
かき鳴らす 身体もうかぶ
すい込まれる音を繋ぎあわせ 荒々しくたばね
炎に投げこむ
灰となってみだれ散るのを
どうしても射ずにはいられない
すとり すとりと
的へと向かう矢のゆるやかな軌跡
何も考えず
息する また息できる
世界が水にゆるされている

公園に ながい間隔で現れる
噴水が 誰かに眺められ恥じらってまばゆく落下する
その嬉しそうな響きであらゆる哀しみを優しくつつむ

夜の波にのってただよう珊瑚のたまご
お父さん
お母さん
いってきます
あなた達のことを忘れません





自由詩 子どもの海 Copyright soft_machine 2024-05-12 13:08:51
notebook Home