群れ
山人

一匹のイワシが大海の中で、何かを思考しながら泳いでいる
あまりにも複雑な海の水はとても塩辛くて、飲んでは吐き
体内をおどるように走る塩辛さに眉をひそめながら
それでも彼は泳ぎ続けるのだ
まがいもない、群れだ
彼は一匹なのに、ずいぶんな群落を背負いながら泳いでいる
孤独であることも承知していた
強い圧力で当たってくる無言の力が彼を苦しめていた
ずっと今までもそうしてきた
ずっと一匹だった、一人だった
寄り添うものも居なければ、囁きかける昆布も居ない
味の薄れたプランクトンを食み、目は見ひらいている
自らの鼓動は未だ不確かではあるが感じていた
そう思いながら彼は夜明けを密かに感じていた
何の根拠もないながらも
そう、思い込むしかなかった
彼の後ろには無限の見えない群れがあった



自由詩 群れ Copyright 山人 2024-05-11 05:00:22
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